ふるさと納税は寄付金控除での節税と負担額2,000円で各地の特産品を貰う事ができる制度である事はふるさと納税の概要の記事で紹介した通りです。しかし、この記事のデメリットで紹介したように、寄附をした人に送られる特産品が課税対象になるという落とし穴があるのです。
今回はこのふるさと納税の落とし穴について紹介していきたいと思います。
特産品は一時所得の課税対象
国税庁の質疑事例では、以下のようにふるさと納税の特産品の課税関係について触れています。
ふるさと寄附金の謝礼として受ける特産品に係る経済的利益については、所得税法第9条に規定する非課税所得のいずれにも該当せず、また、地方公共団体は法人とされていますので(地方自治法第2条第1項)、法人からの贈与により取得するものと考えられます。
したがって、特産品に係る経済的利益は一時所得に該当します(所得税法第34条、所得税基本通達34-1(5))
引用:「ふるさと寄附金」を支出した者が地方公共団体から謝礼を受けた場合の課税関係|国税庁
ふるさと納税は【特産品も貰えて尚且つ節税ができる】というのがメリットの1つですが、結局課税されてしまうのでは意味が無いじゃないかと思いますよね。ですが、いきなり課税されると言うわけではありません。その理由を説明する為にも、一時所得の計算式について少し見て行きましょう。
一時所得の計算式とふるさと納税との関係
一時所得の金額=総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)
この式にふるさと納税を当てはめると総収入金額が特産品となります。特産品はお金では無いので、その時の時価又は送り主の自治体から何円相当の特産品など書類が同封されている場合にはその金額で評価する事になると思います。
この金額への換算は難しい話ですよね。寄附をする際に特産品の金銭相当額も送付してくれるように自治体にお願いしたらいいのかもしれませんが、全ての自治体が対応してくれるかは分かりません。
次に収入を得るための支出ですが、ここは寄付金額とはなりません。ここが寄付金になれば一時所得が0円になるので、落とし穴を考える必要はないのですが、残念ながら寄付金はあくまで寄附なので特産品を得るための支出とはなりません。
注目すべきは最後の「特別控除額(50万円)」です。総収入金額が50万円以下の場合には、この特別控除額によって一時所得が0円となり税金は発生しない事になります。50万円分の特産品なら税金の事を考える事なく貰う事ができるというわけです。50万円という数字を見て「私には無関係な話だな」と思った人は、こちらの記事で特産品を心置きなく選んでみてください。
一時所得の注意点
一時所得とされるものは特産品以外にも、懸賞金や競馬の払戻金その他生命保険の一時金などもあります。これらの収入金額と併せて50万円以上となってしまうと課税関係が生じ、税金を払わなくてはいけなくなりますので年内の一時所得の合計額について注意しなければなりません。
■一時所得として考えられるもの
(1) 懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます。)、競馬や競輪の払戻金
(2) 生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます。)や損害保険の満期返戻金等
(3) 法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものは除きます。)
(4) 遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
では、どれくらい寄附をしたら一時所得になるのでしょうか?
寄付金額と一時所得の関係
ふるさと納税の特産品がいったい何円相当なのかが不明なので、ここでの説明では特産品の金額を寄付金額の半分と仮定して説明していきたいと思います。
例えば、1万円の寄附で5,000円相当の特産品が貰えると仮定するという事です。全ての自治体を確認したわけではありませんが、だいたいの自治体が寄付金額の30%~50%相当の特産品を贈呈しているようです。
自己負担2,000円で100万円以上の寄附ができる人、つまり、限度額計算の記事を参考にするとサラリーマンでは収入金額が6,000万円以上の人です。そんな人っているのかなって感じですね。
ちなみに民間給与実態統計調査(平成24年分)-国税庁p20では年収が2,500万円超のサラリーマンは8.1万人いるようなので、年収6,000万プレーヤーがいてもおかしくありませんね。
高額所得者の人はこのブログを読まないと思いますが(笑)、一応、収入金額が1億円の人を例に挙げて節税金額を比較してみたいと思います。なお、仮定は上記の同様に寄付金額の半分が特産品の金額とします。
寄付金額 (特産品の金額) | 寄付金控除による 節税額 | 一時所得による 負担の増額分 | 節税額 |
---|---|---|---|
100万円 (50万円) | 99.8万円 | 0円 | 998,000円 |
120万円 (60万円) | 119.8万円 | 22,500円 | 1,175,500円 |
140万円 (70万円) | 139.8万円 | 45,000円 | 1,353,000円 |
160万円 (80万円) | 159.8万円 | 67,500円 | 1,530,500円 |
180万円 (90万円) | 179.8万円 | 90,000円 | 1,708,000円 |
200万円 (100万円) | 199.8万円 | 112,500円 | 1,885,500円 |
ふるさと納税の場合、一時所得の所得金額は収入金額から特別控除額を差し引いて、その残額の2分の1をその他の所得に加算して所得税率を乗じて税額を計算します。所得控除はここでは省かせてもらいます。
例えば200万円の寄附をした場合の特産品の額は100万円なので、{100万円-50万円(特別控除額)}×2分の1=250,000円に所得税率である0.45を乗じた112,500円が一時所得が発生するために増えた負担額となります。
表を見ると、ふるさと納税をギリギリまで行った方が一時所得は発生するものの、全体としては節税額は多くなる事がわかりました。
落とし穴という記事タイトルですが、結論としては一時所得が発生するので節税額は少し減少するけどギリギリまで寄附した方が得である事、また確定申告で申告漏れが無いように注意する必要があるという事になります。
以上、誤りあれば教えて下さいね~
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