ふるさと納税は特産品も貰えて、節税も出来る便利な制度です。所得税にも住民税にもインパクトを与えるので、上手く使えば本当に良い制度だと思います。(当たり前ですけど。)
しかし、所得税の控除であれ住民税の控除であれ、控除できる税金の額には限界があります。つまり自分の支払う税金の額を遥かに超えてふるさと納税をしても全く意味が有りません。それは、ただの馬鹿です。
そこで、この記事ではふるさと納税制度を実際に利用する場合に、どれくらいの金額が貴方にとって最もお得になる支払限度額なのか?の計算方法を一緒に見て行きたいと思います。
その前に、ふるさと納税の寄付金控除の仕組みを勉強して行きましょう。仕組みはいらない結果だけを教えてくれ!という人は目次から該当場所へ行ってください。
ふるさと納税のポータルサイト大手「さとふる」では、自分でわざわざ計算しなくても必要項目を入力すれば一番お得になる寄付金の額を計算してくれるシミュレーションツールが有ります。ソッチのほうが楽です。
ふるさと納税の寄付金控除
ふるさと納税の支払いは寄附金控除として所得金額から控除できます。どれだけ節税できるのかについては、総務省が掲載しているPDFに分かりやすい計算式が有ったのでそちらを引用します。(下記画像はクリックで拡大出来ます)
所得税率と住民税の所得割額は個人の収入金額によって異なります。
分かりやすいとは言え、なんか計算式が多くてウンザリしますよね。なので、実際に税金支払額が減少する金額(節税額)をズバリ言います。
【寄付金の額-2,000円】
これが、そっくりそのまま節税出来る合計額となります。というのも上記貼り付けてある画像の「③個人住民税(特例分)」が非常に大きいですね。この特例はふるさと納税以外の普通の寄付金控除では適用されない特例です。この特例があるおかげで、【寄付金の額-2,000円】がそっくりそのまま節税額となるわけです。
寄付金の額が10,000円の場合は8,000円、寄付金の額が50,000円の場合は48,000円が節税額となります。
単純に計算すると【寄付金の額-2,000円】が節税額になる根拠を計算式で示します。数式が嫌いな人は飛ばして下さい。
まず、上記計算式の①、②、③をガッチャンコすると以下のようになります。
(寄附金-2千円)×所得税率+(寄附金-2千円)×10%+(寄附金-2千円)×(100%-10%(基本分)-所得税率)
そして、(寄附金-2千円)をA、所得税率をBと置き換えると以下のようになりますね。
A×B+A×10%+A×(100%-10%(基本分)-B)
この式を展開して整理すると結局最後に残るのは「A」だけです。
AB+0.1A+0.9A-AB=A
先ほど変換したようにAは(寄付金-2千円)です。
よって、ふるさと納税を利用すると、寄付金額から2,000円を引いた額が所得税・住民税から控除される事がわかります。
ただし、そうは問屋が卸さない。ふるさと納税を利用すればするほど節税出来るなら、日本の財政がおかしくなっちゃいます。
そこで、ふるさと納税で控除できる税金の上限額が決められています。決められていると言っても上限が決まっているのは
「③個人住民税(特例分)」
だけです。特例分として控除できるのは個人住民税の1割が限度となります。
よって、
寄付金の額-2千円-①-②=個人住民税所得割の1割
上記計算式的が、イコールになる寄付金の額を利用すると一番お得になるわけです。
なお、あたり前の話ですが自分が払う予定の所得税・住民税を大幅に超える金額をふるさと納税に利用しても意味無いですからね。だって、そもそもマイナスする税金支払額が無いわけですから。
また、控除の対象となる「寄付金の額」は所得税が総所得金額の40%、個人住民税(基本分)は総所得金額の30%と設定されていますので、この事からも払いすぎても意味が無い事が分かりますね。
住宅ローン控除との併用可能
ローンでお金を借りて住宅を購入した人は住宅ローン控除を受けていますよね。この住宅ローン控除とふるさと納税の寄付金控除は併用する事ができます。
ただ、住宅ローン控除をした事によって、所得税と住民税の支払い額が0円若しくは0円に限りなく近くなるような場合には、ふるさと納税によって寄付をしたとしても控除する税金が無いため節税する事ができなくなります。
そのため住宅ローン控除と併用するなら、住宅ローン控除をしたとしてもふるさと納税の寄付金控除枠がある場合に限定した方が良いでしょう。まぁ住宅ローン控除が有ったとして住民税が0まで行く事は無いでしょうが。
最もお得になる寄附金額の目安と簡単な計算方法
一番効率の良い寄付金額は「自己負担額が2,000円」になるように調整する事で算出できます。言い換えると、2,000円を超えて自己負担額が生じるほどに寄付すると損をすることになります。(多少足が出るのは仕方の無い事ですが)。
自己負担額が2,000円となるように調整して支払われた寄付金額がふるさと納税で利用できる寄付金の限度額ということです。この寄付金の限度額ですが、概ね、住民税所得割額の約1割~約2割強が限度額の幅となります。
幅が出てしまうのは計算式上、高額所得者の方が控除額が大きくなるからです。つまり高額所得者は住民税所得割の約2割強の節税が出来ますが、低所得者は約1割の節税しか出来ません。金持ちはどんどん金持ちになっていきますね(_ _;)
寄付金の限度額の目安
では、具体的に、ふるさと納税の寄付金の限度額がいくらになるのかという話をしていきましょう!と思ったのですが、総務省が既にそういうのを用意してくれていたのでそちらを引用します。
(出典:全額控除される寄附金額の目安-総務省)
文字が小さいと思うので、上記リンクを見て下さい。サラリーマン限定ですが、独身世帯・共働き世帯・核家族世帯などを年収毎に分けて最もお得になる寄付金額の目安を提示してくれています。
更に、上記リンク先ではエクセルの「控除額計算シミュレーション」をダウンロード出来ます。こんなやつ。
生命保険料控除などは反映されていないようですが、大体の限度額の目安を計算できますので、そちらに所得額などを入力して目安の金額を出すのが良いでしょう。
一応、条件付きの計算方法も記事にしておきます。
簡易計算方法
ふるさと納税を最大限効率良く活用するには自分の収入金額での限度額を計算する必要があります。では何を計算しなければならないかというと「住民税所得割額」と「所得税の課税所得金額」です。
この住民税所得割額と所得税の課税所得を算出できれば、所得税の課税所得に応じた以下の式に当てはめると一番効率の良い寄付金額を求める事ができます。
■最大効率の寄付金額計算表(平成26年度実施のふるさと納税(寄附金))
課税所得金額(所得税) | 一番効率の良い寄付金額 |
---|---|
195万円以下 | 住民税所得割額×11.78%+2,000円 |
195万円超~330万円以下 | 住民税所得割額×12.53%+2,000円 |
330万円超~695万円以下 | 住民税所得割額×14.37%+2,000円 |
695万円超~900万円以下 | 住民税所得割額×15.03%+2,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 住民税所得割額×17.76%+2,000円 |
1,800万円超 | 住民税所得割額×20.34%+2,000円 |
※収入金額と所得税の課税所得金額は異なるので、収入金額を当てはめる事がないように注意してください。上表は復興特別所得税も加味しています。住民税所得割とは調整控除後の金額です。
■最大効率の寄付金額計算表(平成27年度実施のふるさと納税(寄附金))ー予想
課税所得金額(所得税) | 一番効率の良い寄付金額 |
---|---|
195万円以下 | 住民税所得割額×23.56%+2,000円 |
195万円を超え 330万円以下 | 住民税所得割額×25.06%+2,000円 |
330万円を超え 695万円以下 | 住民税所得割額×28.74%+2,000円 |
695万円を超え 900万円以下 | 住民税所得割額×30.07%+2,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 住民税所得割額×35.52%+2,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 住民税所得割額×40.68%+2,000円 |
4,000万円超 | 住民税所得割額×45.30%+2,000円 |
総務省のHPが最新バージョンにまだなっていないので、上記表は多分こうなるんじゃないかという予想です。確定したらまた変えます。
大体サラリーマンの人はボーナスが12月に有るのでそれによっても金額は変動すると思いますが、自分の課税所得がどれくらいになるのか予想して計算すれば大体近しい金額を出せると思います。
最後に
ふるさと納税の限度額計算は1年間の収入から計算を始める事になるので予測の範囲となってしまいます。予測した収入と実際の収入とが全く違っていたら損をしてしまう事になります。ここがなかなか難しい話ではあります。
なのでこういった損をしない為には確実に自分の1年間の収入金額がわかる12月に源泉徴収票を貰い年内にふるさと納税をするか、予測と実際のズレが少なくなる1年の秋から冬に掛けてふるさと納税をした方がいいでしょう。
また単純に去年の所得税・住民税を元に住民税の1割と考えて寄付をしてみると寄付しすぎてしまうトラブルには巻き込まれないと思います。
まぁサラリーマンの人であれば変動するのは賞与の部分だけだと思うので、そこを気をつけてやってもらえれば痛い目は見ないと思います。もしガッツリ節税をしたいと言う人は税理士などの専門家に相談してみるといいでしょう。