個人事業主が法人成りすると、自営業のままでは出来なかった節税が出来るようになりますが、今回紹介する「出張旅費規程の整備・運用」もその一つです。
僕はまだ単なる自営業なので使えませんが、法人化した際には、いのいちで出張旅費規程を作ってやるぜ!と思っているわけですが、今日はそのメリット・デメリットの紹介です。
目次情報
出張旅費規程を作るメリット
出張旅費規程を作ることによって得られるメリットはいくつか有りますので、一気に箇条書きで紹介していきます。その後補足。
- ①出張旅費(宿泊費も)は実費精算しなくてもOK
- ②出張手当(日当)は給与扱いされない
- ③所得税・住民税の対象給与にもならない
- ④社会保険料の報酬にも該当しない
- ⑤出張旅費・宿泊費・日当は課税仕入れの対象になる
以下、詳しく見て行きましょう。
①出張旅費(宿泊費も)は実費精算しなくてもOK
ここでの出張旅費には旅費及び宿泊費両方を含むものとして記述しています。
最近は経費削減の流れで旅費も宿泊費も「実費精算」にしている会社も結構有るのかな?とは思いますが、出張旅費に関して実費精算しなければならないという規定は有りません。
会社で作った「出張旅費規程」に従った金額を支払えばそれでOK。
これ、従業員や役員側からすると非常に美味しい規定ですね。だって、貰える交通費や宿泊費は定額で決まっているわけですから、それよりも安い交通機関や宿泊施設を利用すれば実費と定額支給分の差額をそのままお小遣いとして利用出来るようになります。
出張旅費は実費弁償の性質を有していますから、差額分を小遣いとして貰ったとしてもそこに税金や社会保険料はかかりません。仮に月の半分以上は全国に出張に出かけているとかだったらかなりの金額になりますね。
僕もサラリーマン時代は結構東京出張が多かったので、この制度を利用して臨時小遣いをゲットしていました。お金が無かった時なんかは真剣に夜行バスで行ってやろうかと思ったことも有ります。(流石に仕事に響くので夜行バスは結局使いませんでしたが・・・)
1週間丸々出張ともなると宿泊費も合わせて考えれば、一気に4,5万円くらいお小遣いゲットしたこと有ります笑
なのでクライアントと同じホテルに泊まって下さい!という指令が出た時なんかは非常に残念な気分になりましたwww
例えば、今だったらふるさと納税で格安航空会社ピーチのポイントを貰えたりするので、もし利用出来るなら、それを利用してみても良いんじゃないでしょうか。個人としても所得税・住民税がふるさと納税で節税できますし、更には税金のかからないお小遣いまで貰えてしまいます。
②出張手当(日当)は給与扱いされない
考え方としては先ほどの出張旅費と同じです。そもそも手当・日当の考え方は、
という所に有ります。もちろん、こちらも給与扱いとはならず出張先で一切の飲食等しなければ日当が丸々お財布に入るので、非常に美味しいです。
特に、法人なりした企業の社長さんであれば、夜とかは取引先と飲食するでしょうからそこは接待交際費として経費に落とすでしょうし、上司と出張に行ったりしたら上司がご飯代を出してくれる事も有るでしょう。
金額的な支給額は出張旅費よりも少ないですが、安い宿を探したり安い交通機関を探さなくても定額が支給されるという意味では出張旅費よりも美味しいですね。
③所得税・住民税の対象給与にもならない
これも非常に大きいですね。例えば所得税率が10%区分の人であれば住民税と合わせると約20%の節税になります。年間の出張旅費・手当(日当)で浮いた金額が50万円あったとしたら、10万円も節税出来る事になります。
また、所得が多い人ならもっとメリットは大きくなりますよね。平成27年度から所得税の最高税率が45%になりましたから、そこに区分される人の場合は住民税と合わせて約55%の節税になります。
④社会保険料の報酬にも該当しない
社会保険料の計算においても、出張旅費や日当は算定基礎となる報酬に含まれません。大体給与の28%程度(個人負担は14%程度)が社会保険料(税)として徴収されているこの時代で、社会保険料の報酬にも該当しない旅費・日当は非常にメリットが有ります。
社会保険料の報酬に含めないのであれば、社会保険料の会社負担も減りますから会社も個人も嬉しい制度です。
仮に社員一同出張が多い会社であれば、少し日当を多めに払うようにして給与の額をその分引き下げてあげれば、社会保険料の負担も所得税・住民税の負担も無くなるので、そういう会社ならよりメリットを享受出来ますねぇ。
まぁ社員一同出張しまくる会社なんて無いと思いますが・・・笑
⑤出張旅費・宿泊費・日当は課税仕入れの対象になる
これは役員や従業員などの個人に関係するものではなく、法人としての税金支払に関係するものです。ただ、小規模事業者にとって消費税の支払いは結構負担になるので書いています。
消費税の課税体系の4種類(課税・非課税・免税・不課税取引)の違いとまとめ
つまり仕入税額控除の対象となる取引ですから、その分消費税を納める金額が少なくなりますね。
出張旅費規程を作るデメリット
今まではメリットを強調してきましたが、当然デメリットも有ります。ただ、デメリットは役員・従業員等の個人には発生せず「会社」に発生するものばかりです。
- 規定の整備を行い、画一的な運用が必要(手間が増える)
- 会社としてのキャッシュアウトは確実に発生する
①規定の整備を行い、画一的な運用が必要(手間が増える)
出張手当や日当の支給は、何かしらの法律でこれだけなら支給しても良いよ!という規定されている訳では有りません。ですから、運用に当たっては会社内で出張旅費に関する規定を定めて、それに基いて画一的に適切に運用していく事が必要となります。
すると、どうなるのかというとそういう規定が無かった場合と比べると手間が増えるんですねぇ。従業員が作成する書類も増えるし、上司が承認する書類も増える。出張記録もしっかりと記録しておいて税務調査等々で提出しておけるように用意して置かないとならない。
まぁ、小さい会社であれば主に社長さんの手取りを増やすのが主目的で旅費規定を作ると思うので「お金のためにー!」と思えば、なんてことは無い事項ですけど。
②会社としてのキャッシュアウトは確実に発生する
こちらも一人社長が法人なりした場合には、法人と個人の財布はほぼ同一ですから特段デメリットにはなりません。が、従業員を何名か雇っている場合にはデメリットになり得ます。
そもそも、日当制度が無ければ日当を支払う必要は有りません。旅費も定額支給ではなく実費精算にしておけば無駄なキャッシュアウトは発生しません。法人として出張旅費規程を作れば手当も経費にできて消費税も少なく出来るというメリットは有るものの、規定が無ければ払わなくて良いキャッシュアウトが確実に発生します。
自分のため、従業員のためという事で導入するのはとても良いことですが、制度を導入することで会社としてどの程度負担が増えるのかはしっかりと把握しておく必要が有ります。
補足-日当等を受けとる個人のデメリット
先ほど個人のデメリットは殆ど無いと書きましたが、敢えて個人のデメリットを上げるなら「手当は給与ではないので額面の年収が上がらない」という所でしょうか。もしかしたら、住宅ローンを組める金額が少なくなったりするかもしれませんが、現実的に考えてそんなに多くの手当が出るわけは無いので、無視できる程度の問題です。
しかも、これは基本給与を減らして出張手当等で実質給与を増やしているような会社の場合にしか該当しないので、99%以上の人には関係ないと思います。
規程策定時の注意点
特に一人社長さんにとってはメリットが非常に大きい「出張旅費規定」ですが、制度を導入するにあたっての注意点も有ります。
それが、出張旅費や日当の金額の妥当性。これについては同業他社等の事例をチェックして適切な金額を設定するようにしましょう。
こちらについては別途記事にしますので、今回はここでは詳しく触れませんが、不適切な金額を設定していると損金として認められませんし、役員の場合には給与とみなされて課税される恐れが有ります。
追記:記事にしました。
出張旅費・出張手当(日当)の相場や適正額はいくら?
あと、カラ出張も厳禁ですよ!
というわけで、出張旅費規程を整備・運用するメリット・デメリットを紹介しました。使いようによっては手取りが増える規定ですから、出張する機会が多い人は税理士に相談して導入を検討してみましょう!